好男好女

ホウ・シャオシェンによる95年の映画。『非情城市』『戯夢人生』に続く、台湾現代史3部作の完結作。日本語版DVDも手に入る。

女優の梁静(伊能静)は、台湾で起きた知識人弾圧事件を題材にした映画「好男好女」で実在の女性蒋碧玉の役を演じている。一方、私生活では恋人の阿威を亡くし悲嘆に暮れる日々から未だ抜け出せないでいた。そんな梁静のもとに、以前盗まれた彼女の日記帳の断片がFAXで送りつけられ続けていた。そこには、恋人を失って自暴自棄な生活を送る彼女の赤裸々な告白が綴られていた。そして、劇中映画のヒロインと夫・浩東の清廉な物語、梁静と阿威が過ごした愛憎の日々、さらに現在進行する梁静と義兄との自堕落な関係が錯綜し始める。


この映画はスタンリー・クワンの『ロアン・リンユィ 阮玲玉』に少しだけ似ている。過去を生きたある人物を、現代の女優が演じる点が同じだ。違うのは、こちらでは現代を生きる女優の方が主役であるということ。彼女は過去に生きられた人生を演じることで、自らの人生を振り返ることになる。

もっとも、映画で描かれる梁静の生は、その過去と現在がある。過去に彼女はもう死んでしまった男と生きており、現在ではその兄と生きている。どこからともなくFAXで送りつけられてくる過去の日記は、その当時の彼女自身の日記だ。

過去は繰り返されることで増幅され、それはまるで実体であるかのように存在し始める。今や彼女は、現在と、二つの過去を同時に生きることになる。

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